プロジェクトメンバーの本
プロジェクトメンバーの編著が続々と出版されています。
・大谷栄一他編『ソシオロジカル・スタディーズ―現代日本社会を分析する』
・櫻井義秀、三木英編『よくわかる宗教社会学』
詳しくは、右のリンク「関連書籍」をどうぞ
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第6回研究会での玉置充子氏(拓殖大学海外事情研究所華僑研究センター)の報告「タイ華人の民間宗教系慈善団体の社会活動とネットワーク」のレジュメと報告を掲載します。
レジュメ「「tamaki.pdf」をダウンロード
*本レジュメからの無断引用はご遠慮下さい。引用される際には、本研究プロジェクトでの玉置充子氏による報告レジュメが出典であることをご明記いただければ幸いです。
研究会報告
発表者 玉置充子(拓殖大学海外事情研究所華僑研究センター)
「タイ華人の民間宗教系慈善団体の社会活動とネットワーク」
報告者 玉置 充子
本報告は、タイの「民間宗教系」華人慈善団体の社会活動およびそのネットワーク形成について考察したものである。一般にタイの華人というと、ホスト社会への同化が進んでいると考えられているが、その一方で中国人性を維持した華人団体が活発に活動していることも事実である。特に慈善団体は、「タンブン(徳を積む)」の習慣があるタイ社会において受け入れられやすいことから存在感を増している。華人団体の発展の背景には1980年代以降のタイ社会における変化が挙げられる。
「民間宗教系」とは、中国に起源を持ち中国の民間神を祀る華人系間慈善団体を指す。本報告では、そのうち善堂と徳教会を取り上げた。
善堂は、清末に潮州の「大峰祖師」信仰と結びついて発展した慈善結社で、民国期に全盛期を迎えた。善堂は20世紀初頭にタイに伝わり、バンコクに華僑報徳善堂が設立された。報徳善堂は現在、タイ最大の民間慈善団体と言われ、災害救助、医療、教育等の分野で幅広く社会に貢献している。善堂は戦後にはタイ各地で設立され、特に南部では善堂を中心とした独自の連合組織が発足した。
徳教会は、1939年に潮州で創始された教団で、善堂とは共通点を持つ。徳教会は1950年代以降にタイに伝わり、現在80閣以上が加盟する全国的な連合組織を持つ。善堂や徳教会にかぎらず、タイの華人団体は華僑報徳善堂を中心に“慈善ネットワーク”を形成し、共同で災害救助等を行っている。
善堂をはじめとするタイの民間宗教系華人慈善団体は、社会全体向けには、災害救助、医療、教育、貧困者救済等の慈善活動を展開しており、華人コミュニティ向けには、祖先祭祀、文化継承、癒しの場として機能している。報告の最後には、こうした活動がトランスナショナルな動きや華人コミュニティと中国との関係強化の流れの中でどのような展開を見せるのかが今後の課題として述べられた。
質疑応答では、まず、世代交代が進む中、タイの「華人」をどう定義づけるのかという問いが投げかけられた。これに対して、発表者は、中国に出自を持つとともに中国系としての意識を持っているかどうかを基準と考えると答えた。
また、華人の慈善団体への寄付には、華人文化を継承するため、つまりアイデンティティ戦略としての意味があるのかという質問に対して、発表者は、団体の理事を務める華人指導層の間には、世代交代による文化断絶への危機感が強く、慈善団体の活動を通して文化を継承したいという戦略的な考えは当然あるだろうと答えた。
さらに、寄付の動機について、タンブンに基づいたものなのか、華人社会の伝統的な価値観によるものなのか、という疑問が示された。これに関しては、発表者に代わってタイの事情に詳しい参加者から以下のような貴重な指摘がなされた。
タイでは、仏教に基づいたタンブンであっても結局は「自分に対する功徳」として行われている。民間の慈善事業は、公的な福祉制度が未発達なため、仏教も含めて民間の宗教が制度としてそれを肩代わりしているのである。こうした制度には市民社会が発達しないという大きな問題があるが、西洋流の市民社会論が通じない事例として興味深い。
このほか、慈善活動に関わる個々人の参加の動機について質問があったが、これは発表者にとって今後の調査課題として残された。
第6回研究会での岡光信子氏(東北大学大学院文学研究科専門研究員)の報告「イスラム社会におけるキリスト教修道会の社会奉仕-インドネシアを手がかりに-」のレジュメと報告を掲載します。
レジュメ「okamitsu.pdf」をダウンロード
*本レジュメからの無断引用はご遠慮下さい。引用される際には、本研究プロジェクトでの岡光信子氏による報告レジュメが出典であることをご明記いただければ幸いです。
研究会報告
発表者 岡光信子(東北大学大学院文学研究科専門研究員)
「イスラム社会におけるキリスト教修道会の社会奉仕-インドネシアを手がかりに-」
報告者 岡光信子
本報告は、イスラム教徒が多数派を占めるインドネシアにおいて、少数派となるキリスト教組織のカトリック女子修道会が運営する母子シェルターを取り上げ、その社会貢献的側面と、宗教組織故の限界について考察を行ったものである。母子シェルターは、1934年以来、ジャワ島を中心に活動する国際的な修道会の中央ジャワ州にある修道院敷地内に設置され、諸事事情により自宅で出産準備ができない女性が身を寄せ、いわゆる「望まれない子供」を出産し、出産後の母子の社会復帰を助ける施設として運営されている。
カトリック教会は宣教地において医療・弱者救済活動などの「慈善」の伝統をもつ。母子シェルターは、非営利組織であり、「望まない妊娠」によって社会的に疎外された母子が緊急避難的に身を寄せる場所として、採算を度外視して運営されている。このことから、母子シェルターは、カトリック教会の慈善活動の伝統上にあるものと位置づけられ、宗教組織の社会貢献の一例として捉えることが可能である。
修道会の従うカトリック教会は、信仰と道徳的な理由により堕胎を認めていない。修道会は、予想外の出来事で始めたベビーシェルターの運営経験により、児童遺棄の陰に多数の堕胎があることに直面する。母子シェルターは、カトリックの一組織として現実的に対応する手段として設立されており、その活動は宗教的な理念に支えられている。また、キリスト教は、インドネシアでは宗教的に少数派であるために、修道会は母子シェルターの利用者の宗教的帰属を限定しておらず、インドネシア政府もその活動を評価している。
現在、母子シェルターは、修道会の社会福祉事業のひとつのユニットとして運営されている。母子シェルターは、政府の介入を警戒し公的援助を受けておらず、一会員の親族の寄付に依存するなど資金収集に致命的な欠陥をもっている。さらに、カトリックの修道会の共通の問題である会員の高齢化と減少という運営母体自体の問題に直面しており、今後の事業の継続・展開に多くの課題を残している。
本報告は、修道会からの要請により、修道会名、修道院の所在地、施設名および利用者名は匿名にして報告を行った。
参加者からの質問は以下のようなものであり、今後の研究課題に多くの示唆を受けた。
①母子シェルターが公的援助を受け入れない理由。
②インドネシアにおける縁組み、里親について。
③合法的・非合法の堕胎に関する現状。
④一シェルターの個別的な事例とインドネシア全体の事例をどのように関係づけるのか。
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