第6回研究会のレジュメと報告(岡光信子氏)
第6回研究会での岡光信子氏(東北大学大学院文学研究科専門研究員)の報告「イスラム社会におけるキリスト教修道会の社会奉仕-インドネシアを手がかりに-」のレジュメと報告を掲載します。
レジュメ「okamitsu.pdf」をダウンロード
*本レジュメからの無断引用はご遠慮下さい。引用される際には、本研究プロジェクトでの岡光信子氏による報告レジュメが出典であることをご明記いただければ幸いです。
研究会報告
発表者 岡光信子(東北大学大学院文学研究科専門研究員)
「イスラム社会におけるキリスト教修道会の社会奉仕-インドネシアを手がかりに-」
報告者 岡光信子
本報告は、イスラム教徒が多数派を占めるインドネシアにおいて、少数派となるキリスト教組織のカトリック女子修道会が運営する母子シェルターを取り上げ、その社会貢献的側面と、宗教組織故の限界について考察を行ったものである。母子シェルターは、1934年以来、ジャワ島を中心に活動する国際的な修道会の中央ジャワ州にある修道院敷地内に設置され、諸事事情により自宅で出産準備ができない女性が身を寄せ、いわゆる「望まれない子供」を出産し、出産後の母子の社会復帰を助ける施設として運営されている。
カトリック教会は宣教地において医療・弱者救済活動などの「慈善」の伝統をもつ。母子シェルターは、非営利組織であり、「望まない妊娠」によって社会的に疎外された母子が緊急避難的に身を寄せる場所として、採算を度外視して運営されている。このことから、母子シェルターは、カトリック教会の慈善活動の伝統上にあるものと位置づけられ、宗教組織の社会貢献の一例として捉えることが可能である。
修道会の従うカトリック教会は、信仰と道徳的な理由により堕胎を認めていない。修道会は、予想外の出来事で始めたベビーシェルターの運営経験により、児童遺棄の陰に多数の堕胎があることに直面する。母子シェルターは、カトリックの一組織として現実的に対応する手段として設立されており、その活動は宗教的な理念に支えられている。また、キリスト教は、インドネシアでは宗教的に少数派であるために、修道会は母子シェルターの利用者の宗教的帰属を限定しておらず、インドネシア政府もその活動を評価している。
現在、母子シェルターは、修道会の社会福祉事業のひとつのユニットとして運営されている。母子シェルターは、政府の介入を警戒し公的援助を受けておらず、一会員の親族の寄付に依存するなど資金収集に致命的な欠陥をもっている。さらに、カトリックの修道会の共通の問題である会員の高齢化と減少という運営母体自体の問題に直面しており、今後の事業の継続・展開に多くの課題を残している。
本報告は、修道会からの要請により、修道会名、修道院の所在地、施設名および利用者名は匿名にして報告を行った。
参加者からの質問は以下のようなものであり、今後の研究課題に多くの示唆を受けた。
①母子シェルターが公的援助を受け入れない理由。
②インドネシアにおける縁組み、里親について。
③合法的・非合法の堕胎に関する現状。
④一シェルターの個別的な事例とインドネシア全体の事例をどのように関係づけるのか。
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